つや姫マイスター日記

2023.08.07

8月1日(火) 品種改良に用いる遺伝資源の維持に取り組んでいます。

 農業総合研究センター水田農業研究所(鶴岡市)では、庄内の篤農家、阿部亀治氏が明治時代に育成した「亀ノ尾」等の民間育成品種や昭和10年から昭和56年まで育種を行ってきた尾花沢試験地育成の品種・系統、昭和38年から取り組んできた当試験場の育成品種・系統をはじめ、全国の様々な品種、外国稲までもの約600品種の種子を保存しています。これら品種・系統の種子は品種改良の遺伝資源として用いることから、貯蔵庫で生命力を維持するよう5℃の低温で厳重に保管されます。貯蔵期間が5年以上になると発芽力の低下が顕著になるため、5年に1度、更新を行います。

 遺伝資源の中には、本県の主力品種「はえぬき」「つや姫」「雪若丸」をはじめ、酒造好適米「雪女神」等の両親の品種・系統も含まれます。過去に栽培されていた品種や品種までに至らなかったものの優れた特性を持つ系統がほとんどであり、5年に1度、稲姿を見ることができる貴重な機会です。出穂期や草姿等を調査し、特性を記録するのですが、圃場に出かけるのが楽しみになるくらいワクワクします。

 品種の系譜をたどりながら、育種のルーツを思い浮かべ、品種として世に出るまでの苦労や努力を想像すると、育種に取り組んできた先人たちの偉大さを実感します。今年度、水田農業研究所では62組合せの交配を計画し、現在はその作業の最盛期となっています。得られた各組合せの種子は最大約10万個体まで養成されます。それでも、先人の育種功績に追いつくには果てしない道のりですが、稲作現場の改良につながる優れた品種を開発できるよう取り組んでいきます。

【農業総合研究センター水田農業研究所】

出穂時の調査の様子

出穂時の調査の様子

様々な稲の様子(まるで田んぼアート)

様々な稲の様子(まるで田んぼアート)