つや姫の生育状況や田んぼでの作業の様子、実際作付けしている生産現場から生産者の生の声をレポートしていきます。
2023.09.07
山形市みのりが丘にある農業総合研究センターでは、「つや姫」「雪若丸」の生育に関する情報を逐次提供しています。
梅雨明け後は晴天が続き、気温が高く経過したことから、「雪若丸」は7月31日、「つや姫」は8月5日と、平年より3~4日早く穂が出ました。
穂が出てから収穫まではお米が実る登熟(とうじゅく)の期間で、実り具合によって品質や食味に影響が生じます。今年の8月の高温は、これまで「つや姫」「雪若丸」が経験したことのないものとなりました。気温が高すぎると稲体の消耗が大きくなり、弱ってしまいますが、きめ細かな水管理をはじめとした丁寧な管理を行ったことで、ここまで順調に実っています。また、生産現場においてもしっかりと管理されており、順調に実っているようです。
当センターでは例年より早く早生品種の収穫が始まっており、「つや姫」と「雪若丸」も間もなく収穫の適期を迎えます。今年もおいしい「つや姫」と「雪若丸」をお届けできるよう、登熟の状況や収穫のタイミングなど現場で役立つ情報を提供していきます!
【農業総合研究センター 土地利用型作物部】
「つや姫」の様子(8月31日)
「雪若丸」の様子(8月31日)
2023.09.01
猛暑が続いていますが、青く冴えわたる秋空とともに庄内平野に収穫の時期が来ました。酒田市亀ヶ崎のつや姫マイスター松田悟さんは、収穫作業の準備に大忙しです。手塩にかけてきた「つや姫」の田んぼは少しずつ黄金色に染まり、9月中旬からの収穫を前に、暑い中、畦畔の草刈りに汗を流しています。
「今年は、穂が出てから異常な高温が8月いっぱい続き、圃場の水管理にとても苦労した。このような年は基本技術をいかにきちっとやっているかが、収量・品質に現れてくる。」とおっしゃいます。いつも以上にきめ細かに水管理を行い、「つや姫」が高温で消耗しないようにしてきました。「これほどの高温は経験したことがない。品質への影響が心配だが、苦労した分だけ、すばらしい出来栄えになると期待している。今年もおいしい『つや姫』を全国の消費者に自信をもって届けたい。」と収穫を楽しみにしていました。
【酒田農業技術普及課】
稲刈り前に草刈りを行う松田悟マイスター
2023.08.22
置賜地域つや姫マイスターの会では、県内の他地域の「つや姫」栽培の取組みを学ぶため、8月3日(木)に鶴岡市の鈴木仁氏の田んぼで研修を行いました。
鈴木仁氏は、つや姫マイスター制度発足時からのマイスターで、令和3年度「つや姫」おいしさの神コンクールでゴールドメダル(最上位賞)を獲得しており、庄内地域の「つや姫」栽培をリードする代表的な生産者です。
鈴木マイスターからは、稲作の信条として、日頃から田んぼを観察し、様々な方々と意見交換しながら栽培を進めていることを聞いた上で、新技術の衛星リモートセンシングを活用した生育管理技術をどのように取り入れているかについて具体的な意見交換がなされました。
惜しみなく米づくりの技を話していただき、参加した置賜地域のつや姫マイスターの方々は、気候や土の特性の違い、資材の選定、さらには、今年の田んぼの出来具合など、米づくりの話に花が咲き、予定した時間を超える熱心な研修となりました。
庄内平野に広がる夏空の下、米づくりの技やスマートつや姫の取組みをしっかり学ぶことができました。
つや姫マイスターは、たがいに笑顔で交流し、大変有意義な1日となりました。
【西置賜農業技術普及課】
鈴木仁マイスター(右から3人目)と置賜地域つや姫マイスター
2023.08.07
農業総合研究センター水田農業研究所(鶴岡市)では、庄内の篤農家、阿部亀治氏が明治時代に育成した「亀ノ尾」等の民間育成品種や昭和10年から昭和56年まで育種を行ってきた尾花沢試験地育成の品種・系統、昭和38年から取り組んできた当試験場の育成品種・系統をはじめ、全国の様々な品種、外国稲までもの約600品種の種子を保存しています。これら品種・系統の種子は品種改良の遺伝資源として用いることから、貯蔵庫で生命力を維持するよう5℃の低温で厳重に保管されます。貯蔵期間が5年以上になると発芽力の低下が顕著になるため、5年に1度、更新を行います。
遺伝資源の中には、本県の主力品種「はえぬき」「つや姫」「雪若丸」をはじめ、酒造好適米「雪女神」等の両親の品種・系統も含まれます。過去に栽培されていた品種や品種までに至らなかったものの優れた特性を持つ系統がほとんどであり、5年に1度、稲姿を見ることができる貴重な機会です。出穂期や草姿等を調査し、特性を記録するのですが、圃場に出かけるのが楽しみになるくらいワクワクします。
品種の系譜をたどりながら、育種のルーツを思い浮かべ、品種として世に出るまでの苦労や努力を想像すると、育種に取り組んできた先人たちの偉大さを実感します。今年度、水田農業研究所では62組合せの交配を計画し、現在はその作業の最盛期となっています。得られた各組合せの種子は最大約10万個体まで養成されます。それでも、先人の育種功績に追いつくには果てしない道のりですが、稲作現場の改良につながる優れた品種を開発できるよう取り組んでいきます。
【農業総合研究センター水田農業研究所】
出穂時の調査の様子
様々な稲の様子(まるで田んぼアート)
2023.07.31
約25haの水田を管理する高畠町の金子和徳マイスター。今年の水稲の生育は、田植え後の日照不足と強風の影響で遅れ気味でしたが、現在は順調に回復し、「つや姫」は元気に育っています。
「今日ちょうどドローンでミネラル資材を散布するから、見ていく?」そう話す金子マイスターは、今年就農10年目です。以前は、「つや姫」の食味が良くなるように、追肥の量をかなり控えていました。しかし、ある年、お客さんから「今年は粒が小さいね」との声をいただき、食味を気にして肥料の量を抑えすぎてしまっていたことに気づき、食べて満足してもらえる「粒張り」も大事だと感じたそうです。今年も「つや姫」の生育診断を行った上で栄養状態を見極め、窒素量で0.8kg/10a程度を追肥しました。また、今の時期はミネラル資材やケイ酸資材を散布し、おいしくて粒張りの良い「つや姫」ができるよう工夫しています。
最近は、経理や資材等の在庫管理などの事務作業改善を図るべく「RPA(Robotic Process Automation)」の研修に通うなど、経営改善にも積極的に取り組みつつ、地域の「つや姫」良食味生産をけん引する期待のマイスターです。
【置賜農業技術普及課】
ほ場の前で素敵な笑顔を見せる金子マイスター
ドローンでケイ酸資材を散布する金子マイスター
2023.06.29
今年でマイスター4年目となる三川町の齋藤学さんのこだわりは、アイガモ農法による有機栽培。毎年、アイガモが圃場を泳ぎ回っての雑草の発生を防いでくれています。稲が力強く育つよう堆肥を施用した土づくりにも力を入れていて、アイガモの除草効果と合わせて人にも地球にもやさしい米づくりを実践しています。
「脱サラ後就農し、仕事内容が大幅に変わったことで、はじめは体力が続かなかった。農作物は収穫・出荷するまで気が休まらない。」と齋藤マイスター。当初は、教科書に基づいた栽培管理を重視したあまり、日々の気象変化や稲の状態を考慮した管理ができず、品質が思ったよりも高まらないこともありました。当然、消費者の評価も高まらず、「消費者の目線に立ち、美味しくて喜んでもらえる米づくり」を目指して奮起しました。
そこからの齋藤マイスターは、「美味しさへの追求」を極めようとチャレンジしていきました。また、新しい技術に失敗しても、必ずそこから何かを学ぶ努力を怠りませんでした。今では、食味コンクールでの入賞を重ねるほどとなり、ふるさと納税や産直通販サイトにも出品していて、固定客も順調に増えています。
次世代を担う農業者としても地域から期待されている齋藤マイスター。「近年、担い手生産者の作付面積が増える中で、省力化も重要な課題だけれど、基本技術はおろそかにできない。今は、根張りを良くするための中干しの時期。しっかりと栽培管理を行っていく。」と作溝作業の合間に、汗だくになりながら熱く語ってくれました。そして、「収穫した『つや姫』がお客さんの口に入って喜んでもらっている姿を想像しながら、美味しい『つや姫』を作り続けていきたい。」とも語ってくれました。
【庄内農業技術普及課】
座右の銘は「百聞は一見にしかず」と齋藤マイスター(6/16)
乗用管理機で作溝を切る齋藤マイスター(6/23)
2023.06.27
最上地域北部、真室川町の齋藤賢人さんは、新進気鋭のつや姫マイスター。
就農から10年、両親とともに大規模に稲作を展開しており、約18haの圃場で「つや姫」をはじめ、糯米から酒米まで様々な品種を栽培しています。
「自分にはベテランのマイスターのように長年の経験は無いので、様々な情報を得て、自分の圃場に必要な技術を取り入れて実践しています。」という齋藤マイスター。
苗づくりや初期直後の生育初期の管理は米の食味・品質・収量に直結する重要なポイントと捉えており、育苗においてはローラー等を活用して充実度の高い苗に仕上げて移植し、その後の水管理では、日中の止水、水深2~3cmの浅水管理について特に注意を払っています。また、妥協することなく全ての品種・圃場で、生育に合わせた穂肥を行っており、衛星リモートセンシングを活用した「つや姫」の生育管理技術等のスマート農業技術を駆使した米づくりにも取り組んでいます。さらには、圃場ごとに食味分析をすることで翌年の管理や肥培設計の改善に繋げています。地域の農業の担い手としても期待度の大きい齋藤マイスター。
今年も最上級の米を探求し、皆様にお届けいたします!
【最上農業技術普及課】
「つや姫」ほ場を紹介する齋藤マイスター
2023.05.29
山形市みのりが丘にある農業総合研究センターでは、5月19日(金)に作柄診断圃の「つや姫」「雪若丸」の田植えを行いました。今後、10日毎に生育状況を調査・診断して、今年の生育が過去の年次と比べて良好かどうか等、県内の生産者や現場指導者の皆様に情報提供していきます。
今年の5月は、最低気温がとても低い日があった一方で、5月18日(木)には山形市で5月の観測史上最高となる34.6℃が記録されるなど、気温の変動がとても大きくなりました。育苗ハウス等の温度管理は非常に大変でしたが、概ね良好で充実した良い苗となり、田植え後の生育も順調に進んでいます。
今年も、おいしい「つや姫」「雪若丸」を全国の食卓に届けられるよう、生産者や現場指導者の皆様が必要な情報を、タイムリーにお伝えしていきます!
【農業総合研究センター】
つや姫ほ場の状況
雪若丸ほ場の状況
2023.05.25
太陽が光差し、穏やかな風が吹く5月10日、酒田市坂野辺新田のつや姫マイスター佐藤勝さんは、田植え作業をスタートしました。手塩にかけて育てた「つや姫」の苗で、田んぼは緑色に染まって行きます。
4月、ハウスで育苗管理を行っている勝さんを訪れた際、「今年は健苗ローラーを使って、茎が太く、根張りの良い、健苗に仕上げる」と作業をされていました。佐藤マイスターは、「良い苗になれと気持ちを込めて“毎日”ローラー作業をしたことで、今年もとても充実した苗を作ることが出来た」と、語ってくれました。
5月に入り、いよいよ田植えを迎えました。非常に根張りが良く、丈夫で健康的な苗が次々と植えられていきます。佐藤マイスターも苗の出来栄えに納得の表情を浮かべています。佐藤マイスターは「栽培技術の基本がとても重要」と話しながら、苗を植えるときの“深さ”や1株あたりの“苗の本数”を入念に確認しながら田植えをしていました。田植えが終わった田んぼを見ながら「『つや姫』の栽培を何年も続けているが、毎年天候は違い、管理のやり方もそれに合わせて変える必要がある。秋には立派な穂が実り、おいしい「つや姫」として収穫できるように気を付けて管理していく。」と、意気込みを話してくれました。
【酒田農業技術普及課】
「つや姫」の苗を田植え機にセットする佐藤マイスター
お手製の健苗ローラーを引く様子
2023.05.10
寒河江市のつや姫マイスター土屋喜久夫さん、河北町のつや姫マイスター奧山喜男さんの育苗ハウスで、「つや姫」等の苗の生育状況を確認する育苗巡回が行われました。
「苗半作」と言われるほど、水稲の苗づくりは大事な栽培管理の一つです。稲作農家の皆さんは、健康で丈夫に育った苗が田植え後、順調に生育していくことを経験的に理解しています。
美味しい「つや姫」の栽培を追求する二人の苗は、正に「理想の苗姿!」。丁寧な種まき、細やかな温度管理、適正な肥培管理によって、緑鮮やかで茎が太いずんぐりした苗に育っていました。
「気温の変化が激しい日が続き、温度管理が大変だったが、順調に苗を育てることができた。気温が高い日がまだまだ続くので気を抜かず、丁寧に管理して最高の苗をつくり、最高に美味しい「つや姫」を収穫したい」と、土屋マイスターは意気込みを話してくれました。
今年の「つや姫」にもどうぞご期待下さい!!
【西村山農業技術普及課】
「つや姫」の育苗状況を説明する土屋マイスター(右)
2023.04.28
「つや姫」「雪若丸」を育成した農業総合研究センター水田農業研究所(鶴岡市藤島)では、苗づくりのための播種作業が4月13日から始まりました。
稲の品種開発では、数百種類の種子を遺伝資源として扱い、栽培して交配等に用います。各品種の種子量は数十グラムと少量であるため、育苗箱を細かく仕切って手作業で播種しています。
一粒一粒の種類が異なるため、ピンセットで播種するものもあり、今年から新たに加わった2名の新任のスタッフは、先輩の研究員から「一粒たりとも種子が混ざらないよう注意する」など、播種の仕方や注意点などの指導を受け、緊張しながら作業を行なっていました。
この日に播種されたものは、5月10日に研究所内の試験圃場を同じように細かく仕切って手作業で田植えが行われます。
今年度は、猛暑でも実りの良い稲、病気に強い稲、肥料が少なくても良く育つ稲の開発に取組んでいます。
地球温暖化や担い手不足など、米づくりの抱える課題解決に品種の力で貢献できるよう積極的な研究を進めていきます。
【水田農業研究所】
先輩研究員の指導のもとタネ播きをする新任スタッフ
育苗ハウスの温度管理について指導を受ける新任スタッフ